第1回:ERPが必要な理由を考える

誰が必要としているシステムなのか?

ERP導入を検討する企業は多いと思いますが、実際にはERPの導入は実現せず、ERPもどきの販売管理システムの導入に落ち着くということが多いように思います。特に中小中堅企業についてはその傾向が顕著なのではないでしょうか。

何もERPでなくても運用はできるし、会計システムは今のものを使い続けても、問題ないというのがその理由です。この会計システムというのが少し誤解があります。

確かにERPは会計システムを包含していますが、それは手段であって目的はありません。会社の状況をほぼリアルタイムに把握するために、すべての情報が集まる会計システムのデータを利用するように設計されているものなのです。

会計的に言えば、販売管理システムだけでは売上総利益(粗利)までしか把握できませんが、ERPを使うことによって、営業利益まで把握できるというのがその思想です。

問題はそのような分析を必要としているか?ということになります。分析は粗利管理だけで事足りるという会社であれば、ERPは不要でしょう。決算マシンとしての会計システムが必要なのであれば、ERPは高級過ぎるということになります。

営業主体の会社では粗利管理だけで十分だから不要という結論になるのは仕方がないことです。しかし、人件費・経費を加えて業績を管理したいとなれば、会計側からデータを持ってこないと正しい営業損益は判断できないことになります。

会社にとってシステムは、現場作業が楽になったり、人件費を抑制できるという目に見える効果を期待する定量的な側面と、会社のかじ取りをするために、経営陣に正しい情報を提供するという目に見えない効果を求める定性的な側面があります。

ひと時代前は、定量的な方が圧倒的に優勢で、このシステムを入れるといくら効果があるのか?という点が重要でした。確かに今のこの点の重要度が低くなることはありません。この点が最重要であるならば、そうすべきだと思います。

ただし、経営判断に必要な情報が必要というのが、最重要課題であるならば、不用意に今あるシステムの手直しをするようなことではなく、ERPに大きく舵を取るという方針変更も必要なのではないでしょうか。

しかし、ERP導入はバラ色の事ばかりではありません。むしろその逆で、現場が楽になることはありません。唯一楽になる部署があるとすれば、経理部門くらいだと思います。